あたまに花をさかせる

楽しかったことを書く

おもしろかった!劇団ドラマティカ 西遊記悠久奇譚

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人間の役者さんがゲームのキャラクターを演じた状態で別のキャラを演じるという入れ子構造をどう楽しめばいいのか半信半疑で見に行きました!!

半分疑ってごめん!!!おもしろかった!!!


劇団ドラマティカは、あんさんぶるステージの一種という認識でいいのかというのが気になる

11月3日昼公演 AiiA 2.5 Theater Kobe


あんスタのキャラクターが演じる舞台を見るという楽しさについて

クールな北斗くんが、悟空というやんちゃな役をやることにより、ゲーム本編では見れないガラの悪い態度や口調が見れて、ギャップに心がときめいた。
これが役者の性格を知っていることによる演劇の楽しみかたか、という驚き。
普段、役者さんのことをほぼ知らずに見に行くので、舞台の上にたってるのは舞台上のキャラクターでしかなく舞台でお出しされているものが全部である。それはそれで世界観にどっぷりつかれてとっても楽しい。

でも、演じていない役者の振る舞いを知っていると、ええーっ!あの人がこういう振る舞いをするとこんな感じなんだー!新鮮!っていうギャップが楽しめて良い。
別の楽しみだ。演劇というものを違う角度から楽しむとこうなるよという経験をさせてもらえた。

例えば、夏目くんなんですけど、今回、夏目くんは沙悟浄を演じています。
ゲームで見れる夏目くんは、魔法使いという超常の存在として意識的に振る舞ってるので、かっこつけててスマート。もちろん、ゲームストーリーのなかで、その振る舞いを保てなかったり、弱いところがちらりと見えたり、かっこつけが逆に愛らしく見えてしまうこともあるけど、基本路線はミステリアスクール。
一方、沙悟浄は、魔術のミスで半端に河童になってしまった人間で、中途半端さを補うために、野良の河童を集めて王様を気取り、イキって慣れないラップを歌うというとんちきな行動をします。かっこよくはない。滑稽で愛らしいキャラでした。

あのかっこつけの夏目くんの滑稽な振る舞いが見られるのは劇団ドラマティカだけ!!

三蔵法師の旅に加わってからは、魔術を駆使して華麗に戦い、三蔵法師をサポートする聡明さや優しさをみせるので、普段の夏目くんの良いとこも見られる。

夏目くんの素敵な魅力を沙悟浄という器を通じて凝縮して感じられるのも劇団ドラマティカだけ!!

わたしこれ、熱心に語りましたけど、普通に俳優さんが好きで舞台見てる人には、すごい今更なことかもしれない。
俳優さんが好きで舞台見てる人の楽しみかたを、キャラクターが好きなわたしもちょっと体験できました!という話でした。新鮮で楽しかったんだよー。

カーテンコールもキャラクターでやったので、舞台上にいた役者は夏目くんであって、木津さん(夏目役の役者さん)ではないというのも、徹底してておもしろかった。

わたしは、沙悟浄の奥に夏目を感じて面白がっていたけど、木津さんが好きなかたは、さらに夏目の奥に木津さんを感じるわけだからどんなかんじなんだろう。


ストーリーについて

西遊記って、まっとうに面白いな?三蔵法師が天竺を目指すというストーリーラインは分かりやすく、個性的なキャラクターたちがチャンバラで戦うアクションシーンはワクワクとして、悟空という悪童が人の心を理解する成長パートでホロリと泣ける。エンタメとしての西遊記の良さを再確認した。
有名な古典だから大幅にストーリーを変えるかしらと思っていたが、基本は変えずに、最後の展開を三蔵と悟空にフォーカスしたアレンジにしてあってその塩梅も面白かったですね。殺陣も非常に多く、見ているだけでも楽しい。
あと、あんさんぶるスターズの舞台は、キャラ同士の掛け合いがとっても面白い。本人たちは大真面目なのに台詞回しで笑いを誘うというスタイルは劇団ドラマティカでも健在だった。笑いのツボがあんステくんとは合うのでずっと笑いを噛み殺すのに苦労しました。

演出について

映像が効果的に使われていてとっても楽しかった。西遊記なので悟空は地面を割り、沙悟浄は魔術で攻撃し、猪八戒は風をおこし、玉龍は炎をはくわけですが、映像演出とアンサンブルさんによる布などの組み合わせで、見ていてとってもワクワクするかんじに仕上がっていた。特に玉龍の炎の演出は、一番最初にでてくる敵が玉龍なこともあって、舞台にぶわっと炎が広がったんだなって理解したときに、めっちゃ楽しい~!って気持ちで満たされました。
西遊記を題材にすることで、次々に戦闘が起こるので、殺陣もアクションもとってもたっぷりで楽しかった。
わたしは、アクションが多い舞台が大好きです。満足満足。
演者さんもアンサンブルさんも舞台狭しと動き回っていて、目が足りず、これが生で人間が演じるところを見る醍醐味だなあと3階席から感じていた。
高く組まれたセットに可動式の階段がついていて、それが動き回るなかで殺陣をしているので、動線が複雑怪奇なことになっていて、修練をつんだ人にしかできない技術なんだろうなあと思った。

キャラクターについて(たいへんなネタバレあり)

悟空(氷鷹 北斗)のこと。
北斗くんは普段※「俺はまだまだ上を目指せる。楽しみにしていてくれ」みたいに、フラットなため口でしゃべる人なので、悟空として「俺をあまり怒らせないほうが得策だぜ!」みたいなガラの悪い口調で喋っているだけでだいぶおもしろかった。それが様になっているので、北斗くんの新たな魅力が見られて嬉しい気持ち。悟空の素直な部分とか仲間に対して愛情深い部分は北斗くんのパーソナルな魅力でもあるから重なっている部分は、演劇的にぎゅっと圧縮されて感じることができてたいへん満足。北斗(演者)と悟空(役)で違うところも同じところも魅力的に見えるというのはすごいことだなあ。
最後の三蔵とのやり取りで、三蔵のことがすっごく大事で、三蔵との記憶を失いたくないって涙するところで、気持ちがまっすぐにこっちに伝わってきて、悟空~!って同調して泣きそうになった。北斗くんめっちゃ良い芝居するやん!って思った。これが役者の普段を知っていることによる味わいというものか(二度目)。

※これからいう、普段、というのはゲームのストーリーなどの中で、という意味です。


三蔵(日々樹 渉)のこと。
三蔵法師は、かなり普段の渉さんに近い振る舞いだったので、違和感なく楽しく見ていた。渉さんは天才的な役者なので、たぶん自分から遠いキャラ付けでも上手に演じたと思うけど、北斗くんが普段と違うキャラだから、あえてみんなが期待する日々樹渉をそのままお出しいいただいたのかな。
物語の終盤で、実は三蔵が深い愛情故に狂気にとらわれて、仲間を殺すことで旅を永遠のものにしようとしていたところ、すーっごく驚いた!愉快で明るい日々樹渉を堪能していたので足元をすくわれてしまった。これは演者を知っていることによる驚きですね。日々樹渉だから信頼してしまった。でも、日々樹渉は気に入っているものに対してとても愛情深いキャラクターだと思っているので、この日々樹渉も日々樹渉として全然破綻してないと納得した。なんだろう、三蔵って役がやったことなのに、役者である日々樹渉もこういう事するかもしれないって、役柄を演者に反射させてしまったんよね。不思議な感じだった。ひびわた、こういうことしそうって思ってしまった。謎です。三蔵と日々樹渉は違う人なのにね。
なので、最後の三蔵と悟空の和解シーンで、北斗と渉を重ねてみてしまった。北斗と渉もある種の師弟関係にあるので、悟空と三蔵と立場的には似てるよなーという気づきを最後の最後で得てしまったので、役者の普段と、役柄の芝居が入り混じり、渾然一体となったよくわからない感動を得てしまいました。不思議な体験だった。すごいエキサイティングだったんだけど、掴みきれていないので徐々に噛み砕いていきたい感覚です。

八戒銀閣斎宮 宗)のこと
八戒って、西遊記ものにおいて性格や振る舞いがかなり異なるキャラだとおもうけど、劇団ドラマティカでは優雅で高貴な八戒だった。人任せにする部分を、高貴、と解釈しています。私は斎宮 宗があんスタではかなり好きなキャラクターなので、斎宮 宗の格式高さとか優雅さが反映されつつ、手厳しさがマイルドになっている様子をとっても魅力的に拝見させていただきました。ときめいた。振る舞いの優雅さはさすがってかんじだけど、あくまで妖怪なので、普段の宗さまよりは、芝居がかってない動きをするから、わーっ!多少親しみやすいー!という感動。芝居をしているときのほうが芝居がかっていないとはこれいかに。
斎宮 宗は苛烈な芸術家なのでわりといつも憤ってるんですけど、八戒は終始穏やかなので(自分でなにかする気がない)、宗さまの魅力的な部分が一部抽出されて摂取しやすくなっている、と感動していました。美味しくいただきました。苛烈なところも大好きですけど、それはゲームの方でおいおい知ってもらえればいい部分なのでね。
それから、銀角ですよ、銀角!びっくりしちゃった!宗さまは、絶対あんな振る舞いしないので、これはもうギャップのときめきがぎゅっと凝縮されていて最高にかっこよかった。ざらりとした悪い言葉で挑発して、敵を足蹴にする宗さまのお姿を拝見できるなんて、私は今日見たあの光景を一生の宝とすることとします。脳内で何度も再生して心の支えにする。
八戒の殺陣は姿勢良く動きも優雅で、片腕を背中に回す姿勢をよくとっていたけど、銀角のときは足のお行儀が悪く、大きなひょうたんを担ぐ様が本当にザ・悪役って感じで最高でした。宗さまの普段の魅力が凝縮された八戒と、普段では絶対見れないギャップが堪能できる銀角、一粒で二度美味しい。ありがとう。

悟浄・金角(逆先 夏目)のこと
夏目くんの悟浄については、最初に語ったんですけど、こちらはギャップの魅力ってかんじだった。普段は「子猫ちゃん、魔法にかけられる準備は出来ているかイ?」みたいなことを言っている神秘的な少年なんですけど、悟浄はかわいいってかんじだった。いや、夏目くんは可愛いんだけど、普段はかわいらしさはちらりと見えるかんじで基本的にはかっこいいので、普段は隠されている夏目くんの魅力を前にだしました!というキャラクターに悟浄が仕上がっておりたいへんすばらしかったです。ラップ歌って踊るのびっくりしてわらっちゃった。あんステで夏目くんはダンスが上手いと思っていたのでちょっとでも踊るシーンがあったのは嬉しかったです。
そして金角についてしゃべろう。先に銀角がでていたのでびっくりどは少なかったけど、あんなに機嫌の悪いダウナーな夏目くんが見れたのありがたすぎでした。夏目くんは普段も心を許している相手にはめっちゃきつくあたることがあるんですけど、もうちょっと熱があるので、あんな自分以外を下に見ていますという態度がありありとでた振る舞いがみられたのはとても貴重だった。夏目くんは魔法使いなので、基本的に弱者はすくい上げてくれるので。ここは真逆の魅力ですねー。はあ、いいところばっかりだ。
悟浄の衣装とっても可愛かった。スカートみたいで、夏目くんの小柄さもあいまって最高に佇まいが愛らしかった。

玉龍牛魔王(乱 凪砂)のこと
シンプルに何よりもビジュアルがかっこよくて、ちょっと他の良さを味わうのに時間がかかった。乱 凪砂をステージで見るのが初めてなものだから、殺陣のシーンで、え?そんなところまでリーチが届くの?スタイルが良すぎませんか???って混乱した。玉龍ではなく乱凪砂の魅力を処理するのに頭が一杯になってしまった。武器が刀なのもよかったですねー。長物をぶんぶん振り回すのもそりゃあかっこいいけど、刀だと殺陣の自由が効くから、下から切り上げたり、上から振り下ろしたり、ここぞ!ってばっちりきまっているかっこいい瞬間がたくさんあって眼福でした。
乱 凪砂がどういう人物なのかということをあんまり理解していないというか、普段の凪砂さんは浮世離れしているというか思考が神様っぽくて子供みたいに純粋なとこがあって、能力がめちゃくちゃ高いというなんか万華鏡みたいにきらきら掴みどころのない人なので、玉龍は凪砂さんの普段と比べてどうこうというより、玉龍としてかっこよかったな、という気持ちが凄くある。あっ!凪砂さんは普段、君臨してる側の人なので、誰かにひざまずく姿が見られたのはギャップでした。すごくよかった!
あと、「あのね」っていう言葉遣いが凪砂さんの口調のなかでも随一に好きなので玉龍がそれを使っていたのはとってもとってもよかった。
牛魔王玉龍が交互に表層にあらわれるという芝居をきっちりこなすのは凪砂さんの能力の高さを表していて好きでした。あと地学の知識があるのとっても凪砂さんぽかった。牛魔王の衣装とってもお似合いでした。かっこよかった。

いやー、たのしかったなあ、という気持ちでいっぱいです。
ゲームで前日譚のストーリーが公開されたことにより、興味をひかれたというのがきっかけだったけど、見に行ってよかった!
初めてチケトレを使ったのも良い体験になったな。

おしまい!