あたまに花をさかせる

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【ネタバレ:父と水木が格好良い】映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

妖怪特有アクションを鬼太郎の父(以下、ゲゲ郎と呼ぶ)が繰り出してて爽快だった。斧振り下ろす水木もいいね。
わたしは、アクションがたくさん入っている映画がたのしくて好きです。

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総評

全体的によくまとまっていて、必要なとこに必要な描写があるし伏線の見せ方も匠で「もしかしてあれってこういうことかな?」と想像すると恐怖が増す。M製造工場に捨てられていた人形と咳をする屍から、列車に乗っていた女の子を想起させるとことか。意味がわかると怖い話とか好きだけど、自分で最悪の想像をしちゃったときが一番怖い。怖いものが飛び出てくるときより自分の頭の中が一番怖いから、想像を上手にかきたててくれる演出がたいへん好きでした。

あと、昭和の悪気なく悪いとことかぎらぎらしてるとこが水木周りにつまっていてよかった。いわゆる昭和っていわれて想像するものがぎゅってしてた。昭和、あんまりきれいな時代ではないと思ってる。物理的な意味で。水木が根っこに善性をもってる野心家の昭和の男として描かれている一方で、ゲゲ郎のほうは妖怪だからか、浮世離れしていてむしろ令和の男感がある。人間が嫌い(迫害されているんだからそれはそう)だしあんま興味ないから村で殺人事件起きても他人事だと思ってる。奥さんが最優先事項で、愛のなんたるかを知ってる子供には優しい男。
二人のスタイルの違いもよかった。外見から水木はがっしりしていて手足が短めで日本人体型なのがよい。ゲゲ郎はあの時代にいたらちょっと異国の人っぽいよね。馴染んでない感じが妖怪感あってよかった。

龍賀の女たち

気の毒だわ!!全員、気の毒。上手に狂えなかった沙代に因果が集約してしまって、惨劇の中心になっちゃってたけど、全員かわいそうで鑑賞中ずっと胸が苦しかった。三人の娘たちのなかで一番うまくやっているのは長女だけど、それだってクソみたいな状況に適応できただけだしなー。村長の長田と結ばれないまでもずっとそばで愛されていて、時貞の子を早々に孕んで、その子が時貞のお気に入りになってくれて自分の順番は減ったからやったねって感じだったろうしな。子供への性的虐待はほんとに駄目。駄目だよ。価値観歪んじゃうからほんと駄目だなって乙米さんみながら思ってた。次女の写真が冒頭ででてきていたことと、水木の口から「変わった」と言わせることで、次女が太ってケバくて尻軽な女になっちゃてることが龍賀に歪めれられてるんだなーて後の方でわかってつらい。長田は三女と結婚しているけど、三女は時貞の子を産まなきゃいけないからこの二人の間には夫婦生活がなかったとしても驚かない。長田に夫感がないんよな。はあ、描写がうまい。想像して妄想をかきたてられるように、キャラの行動とか表情とか言動が整理されているから、違和感とか不安感が積み上げられていった先に恐怖があってたいへん楽しいです。
性的虐待とか人体改造とか胸糞悪い要素を直接描写じゃなくて言葉や態度でちらちら見せてくる塩梅がとてもよかったです。余計に怖くていいね。

ゲゲ郎のアクションシーン

ゲゲ郎のアクションシーンがとてもよかった。やはり人でないもののアクションはいい。前半、中盤、後半でバランスよくアクションがあったのもよかった。やっぱり派手なシーンがないと飽きちゃうのでね。リモコン下駄とか髪の毛伸ばして攻撃するのとか、ご先祖様の紐は、鬼太郎世代には「あー、あれが追々ちゃんちゃんこになるのかなー」と感じさせてよかった。
入ってはいけない森の中で水木を助けた際に見せためちゃくちゃ素早い体捌きとか、脅威のジャンプ力で船にとびのったのかっこよかった。かっぱと目玉の親父が仲良しなのも示されててよかった。私の知っている目玉の親父との共通点がみえるとときめく。
陰陽師たちと戦うとこで柵をむしり取ったの最高に人外で最高でした。体格と筋力が比例しない。さすが幽霊族だ!かっこいい!

目玉の親父とゲゲ郎

ゲゲ郎は目玉の親父の若い日の姿なので、私が鬼太郎シリーズで慣れ親しんでいる目玉の姿と同一なわけです
でも姿がぜんぜん違うし声も違うから、最初は、彼を目玉の親父としてみれるか?と若干疑問だったのですが、涙もろいところ、家族に愛情深いところ、風呂が好きなところなど私が知っている親父を感じさせる部分が入っていて、わりとはやばやと「目玉の親父なんだなー」と納得しました。
目玉の親父はキュートだと思っているので、成人男性の姿でもそのキュートさが感じられるのすごいですね。キャラクタ造形の妙。見せ方の旨さ、関さんのお芝居もよかった

水木と沙代

水木が沙代に優しく手を差し伸べて、下駄の鼻緒を直してあげたのすごーくよかった。打算だとおもうんですけど、女をたらし込むのがあまりに上手ですごいですね。沙代さんが水木に本当に恋していたかは疑問の余地がある。東京から来た大人の男性だから憧れて好きになる可能性は絶対あるけど、ここから逃げ出す手段として利用している部分もある。でもだからそれが愛ではないかっていうとそうも言い切れない気がするんだよなー。連れ出してくれる人のこと、好きになっちゃうと思うの。
なので、沙代は水木のことが好きだったけど、水木は沙代を子供としてしか見れなかったんだなって思う。子供を性的な対象にしない水木、真っ当だな。
だから、沙代が「愛してくれていたんじゃなくて哀れみをかけただけだったのか」って絶望したときに、適当に口先だけでも愛してるとかいいながら抱きしめることができなかったし、憐憫の情から手をとることもできなかったわけで、妙なところで人の良さがでてる!ずるい男!好き!
沙代さんはかなしい。美しくて愛らしい娘なのにひどいめにあって人を殺さなきゃいけないのかなしい。狂骨に取り憑かれてるんだけど、恨みの対象は狂骨と一致しているから、狂骨の力を駆使して一族と村の因縁を殺して回った沙代さん。とてもかなしい。青い炎で焼かれる姿、うつくしかった。

幽霊族の血を桜の下でのクライマックス

ゲゲ郎と水木が水中を探るシーンが最高に好き
水木が怒りにかられて斧を振り回している一方で、ゲゲ郎がただただ必死に水の中を探しているので哀れできゅんとした。なんか超常的な力をつかうとかじゃなくて、水の中にもぐっては目視で探しているの、無力感があってよかった。
その姿を肴に酒を飲んでる時貞へのヘイトがめちゃくちゃ貯まる良いシーンでしたね。
奥さんが見つかったときに、ゲゲ郎が涙を浮かべて、奥さんが「泣き虫ね」ってそっと撫でてあげてるところで、ご夫婦ー!!!末永く幸せになってー!!!って二人の幸福を祈る気持ちが沸き上がった。赤い桜が残酷に綺麗。

ゲゲ郎がピンチになって、狂骨にやられちゃうかもってなったときに、奥さんのお腹の中にいた鬼太郎が泣いて、いままで恨みにとりつかれていた幽霊族のご先祖様が「赤ちゃんが泣いてる!助けなきゃ!」って一旦恨みをわすれて、ゲゲ郎のちゃんちゃんこを霊力で編み上げたのめっちゃよかった。かみしめる。子供が泣いてたら助ける。そうね。

エピローグの鬼太郎

時弥くんの救済が若干おいてけぼりになっていたのが気がかりだったんですけど、鬼太郎が最後に救ってくれてよかった。
ゲゲ郎は世界を救わなきゃいけないし、水木は自分の命とゲゲ郎の奥さんを守らなきゃいけなかったので時弥くんがおいてかれたのはしかたのないことだったんですけど、純粋にただの被害者なので最後にひろってくれてよかった。時弥くんは未来の希望の象徴で、それが変化を嫌う旧態に食い物にされてしまったのが今回なので、なんだろ、未来を良いものにするって課題は我々に託されたなーってなんか感じた。この映画の中では時弥くんの夢は何もなされなかったから、つまりこれからなんですね。
ゲゲゲの鬼太郎の前日譚なんだから、それでいいのか。鬼太郎と、鬼太郎を視聴している我々に未来託されるおわりかただったなーって思いました。

特典について

未来託されたなって思ってるところに、希望の象徴である鬼太郎をあやしてる水木のイラストは涙腺にくるんだわ。お家で涙ぐみました!白状!

良い作品が見れて楽しかった。よい体験でした。大ヒットみたいで嬉しい。作った人たちになんかいいことありますように!